Nobody knows

nobodyKnows_w

肩甲骨が痛い。

きのうの朝
眠気が濃厚に残っている体で夫と海へ行き
しばらくおのおの泳いでいたんだけど、
「白くてきれいな魚いる」、と私が指さすと
視力の悪い夫は、どれどれというふうに潜ったまま
ずーっと夢中で追っていってしまったのか
ポコ、と顔を出したのはまあまあ沖のほう。
風が強いことに気づいていない。
おいおいと思い、心配になり「戻ってこい」のジェスチャーを送るが
遠くでなんかニコニコして手を振ってくるし、焦った。

私は海で本当にこわい思いをした経験が何度かあり、
まして夫はほとんど海で泳いだ経験のない
(モッツァレラチーズのような半身をしている)ひとなので、
戻っておいでよと伝達するのにだんだん必死になり、
そのジェスチャーと泳ぎの両立でわけがわからなくなり
かえって自分が溺れそうになる始末。

こちらの思いも届かず、またペコ、と潜ってしまい
しばらくするとポコ、と顔をだし、さらに遠のいていく夫。
こんなふうに、夫はあっさりと、しかも笑顔で、わたしの人生からいなくなってしまうんでないか、
という不安に駆られ、手足をもつらせながら胸をドクドクドクドクさせていた。
幼い頃わけもなくお母さんが死んだらどうしようと考えて涙ぐむときのきもちに似ていた。

私の姿が見えなくなると、夫も戻ってくるんじゃないかと思いつき、急いで浜に戻る。
それが功を奏して夫はやはりどうしたのという表情を顔に浮かべて戻ってきた。
それから、「茶色(の魚)しかいなかった」といって首をかしげた。
結局、1時間も泳がずに私たちはそのまま家へ帰った。

ずうーんと思い重力に耐えきれず、午前中をぐっすり眠ってしまい目覚めると、
右の肩甲骨に違和感がある。筋肉痛だ。
なにか眠ってる間に埋め込まれたんじゃないか。
心配されたくて、余計に痛がってそう言ってみた。
すると洗濯物を干している夫に「運動不足だね」と片付けられる。

しばらくしてから、沖でノン気に手を振る夫を思い出した。
おまえのせいじゃないか(怒)、と、帰ってきてよかった(安堵)が
ぶわあっとこみ上げてきて、こわい夢をみた子供みたいにすこし泣いた。
誰にも知られず交互にやってくる絶望と安堵。子供の頃は。

海に入ると身体が思い出してしまうのか、
幼いころの、心もとない、だけど透きとおったようなきもちになる。

夏が終わってしまう。

 

gohan.s