Hawaii 2

ハワイとは。

オアシスでもない、パラダイスでもない、ヘヴン…でもない。そんな絵はがきみたいな言葉ではちょっと伝えきれない。私は帰国してから、辞書を引いていた。現地で少し交流のあったひとに御礼のメールを送りたかった。英語が達者ではないので、ハワイってso goodですねということを興奮任せにその場で伝えたけれど、もっとなにかこうバシッちゃんとおのれの身体が味わったハワイを取りこぼすこと無く伝えられる表現はあるまいかと思案していた。幻という意味でドリーム、も近いけど、なんか違う。保留事項!としてメールエディットをしばらくデスクトップに開いたままにしておいた。

滞在中はよく雨に降られた。ハワイとはいえ1月は雨期で、レンタカーで島をぐるっと回っているとみるみると空模様が変りどしゃ降りに合ったり、山間に入り小雨のような霧のようなもので見渡す限りまっしろに包まれたときは、幻想的だったけれどこわくてこわくてどこか黄泉の国へ導かれていってしまうんではないかとハンドルを握る手に汗をかいた。くもりのカイルアビーチもあったし、カネオへ湾まで行っても到着するや否や雨に降られぶるぶる震えながらささやかなシュノーケリングをしたりした。だけどだいたいは、空にフワーっとぼやけた虹をかけて、雨はやむ。ハワイでは虹をとにかく滞在中、感動も薄れるくらいに何度もみた。そしてワイキキビーチへ戻るとだいたい陽は高く容赦なく照っており、すぐに冷えた身体をじわじわとあたため、乾かしてくれた。サンセットはどの日に、どこで見ても、濃厚で美しかった。琥珀色のとろりとした時間が島を包み込んで、まるで島全体がゆっくりまぶたを閉じて眠るように夜を連れてきた。日が落ちてもダウンタウンにはハワイアンミュージックが流れレストランやショッピングセンターもあいているのでビーチ付近は賑やかだけど、夜が深くなってくるともうビーチからは誰もいなくなり、酔っぱらった観光客の声もやみ、なめらかな湿りを含んだ風にほんの少しだけ甘い花の匂いと波音が混じって部屋へと運ばれてきた。毎晩、バルコニーのドアをあけっぱなしにして、その風に包まれて眠った。滞在中は色んなことをしたけれど、疲れて日焼けして火照った身体でしゃりしゃりのシーツにくるまり目を閉じたあとの、それでも密に滑り込んでくるハワイのムードというか肌触りというかそういう闇のなかにも確かにあったあの島の感覚が今となっては身体にいっぱい残っている。

あの石鹸よかったな…日本で買えるかな、とか、ハレイワにグロテスクに生えていたあの草ってなんていう名前だろう、とか、ピナコラーダって何を割ってつくるんだろう作ってみようかな、とか、浜辺から持ち帰った貝殻を手のひらで愛おしく眺めるようにしばらくは、どうにかこの日常にハワイの思い出のキラキラを落とし込めやしないかと思いつくまま検索窓を埋めていると、なんとなく流していたplaylistからポールマッカートニーがGolden slumbers fill your eyesと歌った。それでとても抽象的に、ああ、この感じがとても近い気がすると思った。この曲がどういう曲かはさておき、そうそうすべてが「GoldenSlumbers=黄金のまどろみ」の中にあるような、あちら(眠りとか、もしかしたら黄泉の国)へと続いているかのような島だった、と伝えるのが、今のところは、一番しっくりきている。

gohan.s